15日よりマレーシアにてTPP参加各国による交渉が執り行われるということであるが、相変わらず、日本の大新聞の書いていることは嘘八百である。
ここ暫く「TPP参加」に関する話題を取り上げていなかった故、復習の意味合いも込めて、改めてその”売国的”内容についてみていきたいと思う。
1.TPPを真に差配しているのは多国籍企業群
以前のエントリーにて何度もコメントしてきたとおり、TPPについては日本の政府・官僚は無論のこと、米議会の議員や大統領のオバマですらその具体的な内容に直接アクセスできず、名立たる多国籍企業群がその交渉内容(条件)を完全に掌握・差配しているというのが”事の真相”である。
即ち、日本国内のマスゴミ報道にてこれまでにも報じられてきた日米政府間をはじめとする各国高官同士のやり取りなどは条件交渉でも何でもなく、多国籍企業の主張をただ単に”伝書鳩”的に確認し合っているだけのことだということである。
早い話、以下の産経記事にあるような「条件交渉」など最初から存在しないも同然であり、「聖域は死守」「交渉の出遅れの挽回」といった類の話は、あたかも今後の交渉により日本の立場が有利になる可能性があるかのように見せ掛けるための”虚構”である。
では、一体、その多国籍企業群が具体的に何と言っているのであろうか?
そのごく一部を以下に列挙するが、それはそれは露骨な内容であることが確認できることであろう。
○「TPPはアメリカとアメリカの企業に巨大な利益をもたらす機会」(GE)
○「新開発食品と栄養機能食品の成分・食品添加物の名称・割合・製造工程の表記の緩和(”食の安全性確保”の規制緩和)」
○「主要高速道路、主要公共建築物、鉄道と駅舎の調達、都市開発、再開発事業など日本の大型公共事業へのアメリカ企業の参入」
○「食品添加物の認可手続きの迅速化や防かび剤使用の規制緩和」
○「コメなど主要品目の関税撤廃と、米国産リンゴに対する防疫措置義務の撤廃」(ウォルマート)
○「ポストハーベスト(収穫後に使用する農薬)の防かび剤の登録手続きの緩和」(カリフォルニア・チェリー協会)
○「日本の残留農薬基準の緩和」(カリフォルニア・ブドウ協会)
これだけをみても多国籍企業群の”横暴さ””凶暴性”が如実に感じられる内容であるが、TPPの本質が日本のあらゆる産業分野の”アメリカ市場化”を企図していることは自明であろう。
2.”毒素条項”たるISD条項による「経済植民地化」
もう一点、「TPP参加」における極めて危険な話として我々が認識しなければならないのが、アメリカが”毒素条項”たる「ISD条項」を盛り込むことを企図している点であろう。
この”毒素条項”は外国企業が相手国の政府に訴訟を起こすことができる権利であり、その影響範囲は、安倍政権や大手マスゴミが矮小化している「農業」「医療」分野のみに留まらず、日本のあらゆる産業分野にまでおよぶものであり、特に日本の宝とも言える”知的財産権”(知財)が根こそぎ”略奪””収奪”されるという、トンでもない代物である。
具体的な事例をみると、韓国がアメリカと結んだ「FTA」によって見事なまでに蹂躙され、今まさに露骨な搾取に遭っているほか、これまでにアメリカと国際協定を結んできた中南米諸国等にてあらゆる富・資本の略奪が断行され、多くの国民が貧困状態に陥っているのである。
米投資ファンド「ローンスター」が昨年暮れに、外換銀行の売却で不当な損失を被ったとして韓国政府を提訴した事例などがまさにそれであり、“毒素条項”たる「ISD条項」に基づいた“詐称“”言いがかり“に等しい訴えが数多く発動され、あらゆる産業分野において“略奪“”収奪“が繰り広げられるということであり、これは無論“対岸の火事”などではなく、「TPP参加」後の日本の姿そのものである。
“毒素条項”たるISD条項により、TPP参加後の日本に待ち受けているのは戦後同様の”焼野原”であり、まさに「国家存亡の危機」に直面するといってもよいであろう。
3.TPPの本質は『日米経済調和対話』(=「年次改革要望書2.0」)
皆さんは、アメリカ側から日本に対して一方的に市場開放を要求・恫喝する文書の存在をご存じであろうか?
それは『日米経済調和対話』と呼ばれるものであるが、同文書は「改革」の名の下、数々の売国政策が実現された小泉・竹中政権下にてそのベースとなっていた、あの忌わしき「年次改革要望書」の再来と言えるものである。
『日米経済調和対話』の具体的な内容は少し古いもので恐縮であるが、以下のリンク先にてご確認いただければお分かりのとおり、アメリカがあらゆる産業分野での市場開放を要求する内容であり、早い話、日本に対する”強制搾取”そのものである。
※『日米経済調和対話』 2011 年2 月(仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp04_04.pdf
日本政府や大手マスゴミは同文書の存在そのものに一切触れないが、一方でアメリカ側はこの傲慢極まりない要求文書をご丁寧に和訳までしてアメリカ大使館の公式HP上に堂々と公開しているのであるから、日米の力関係がわかろうという話である。
もう少し踏み込んで上記文書の内容を読み解くと、日本にて実行されている政策のほとんどが、実はこのアメリカ側からの要望内容に基づいて実現されていることが読み取れるであろう。
即ち、様々な分野における規制緩和等に関しては、日本国家にはそもそも論として“独自性”などなく、アメリカが絵を描いているということであり、日本は“隠れ植民地支配”されているも同然だということである。
「TPP問題」を考える際、この『日米経済調和対話』(=「年次改革要望書2.0」)なる要望書・指令書こそが”TPPの本質”であり、換言すれば、アメリカ(多国籍企業群)は「TPP」なる装いを身に纏って、『日米経済調和対話』にて詳細にわたって要求している市場開放を一気に突きつけてきているのである。
早い話、アメリカ(多国籍企業群)が、「TPP」なる”収奪装置”を用いて、これまで『日米経済調和対話』(=「年次改革要望書2.0」)を通して要求してきた日本市場解放を加速させ、その市場を根こそぎ”占領統治”せんとしているということである。
4.総括(まとめ)
2/22のオバマ・安倍による日米首脳会談の共同声明にて「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに2国間貿易上のセンシティビティが存在」と報じられ、日本国内ではそのように認識されているが、一方のアメリカでは、米議会への通知内容にて、オバマ・安部会談の内容そのものが”無きもの”とされ、TPP交渉の中でアメリカ側に日本の農産品に配慮する姿勢などないというのが実情である。
即ち、安倍晋三が「TPP交渉で守るべきものを守る」と言っている話は、米議会への通知ではなんら保証がなされておらず、なかった話も同然だということである。
上記にて述べてきたように、米議会、さらにはオバマにさえも「TPP」の内容に関する決定権がないのであるから当然といえば当然のことであるが、それが現実なのである。
つまり、今度のマレーシアにおけるTPP交渉会合の場にて日本が独自に主張し、勝ち取れるものなどハナから何もないのである。
仮に日本の体裁を保つため、”何らかの譲歩案”が一旦は認められたとしても、それは”毒素条項”たるISD条項によってすぐさまに無意味と化すことであろう。
今週末に迫った参院選に目を転じると、「TPP参加」に明確に反対の姿勢を示しているのは、生活・社民・共産・みどり・大地といった少数野党のみであり、自民は無論のこと、公明・民主・維新・みんなといった第2極と言われる野党の多くが条件付きを含め賛成姿勢であるという、実に嘆かわしい状況である。
即ち、今の国会の勢力図を考えれば、TPP賛成派が圧倒的多数を占めている訳であり、これでは「TPP参加」へ”猫まっしぐら”となることはもはや不可避であろう。
この事実が意味するところは、近い将来、日本が多国籍企業群により”経済占領”されるということであり、フクシマにおける「棄民政策」、「消費増税」などといったものを併せると、日本国民に待ち受けているのは、その大多数が社会的弱者・貧困層に転落し、這いつくばるという「ディストピア」(地獄絵巻)であろう。
(転載開始)
◆日本、出遅れ挽回へ TPP交渉会合きょう開幕
7月15日(月)7時55分配信 産経新聞
貿易自由化や投資ルールを決める環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の締結に向けた交渉会合が15日から、マレーシアのコタキナバルで開幕する。25日までの日程で、日本は米国議会の承認手続きを経て、23日午後から初めて参加する。
今回から合流する日本のための集中討議が最終日の25日に開かれる予定だ。日本の交渉団が先行参加国の首席交渉官らに質問する機会などが与えられる見通しで、「各国の交渉姿勢などを確認するチャンス」(交渉筋)。交渉の出遅れの挽回をはかる。
日本を含む参加12カ国は11日間の期間中、関税撤廃を扱う「市場アクセス」、知的財産、投資ルールなど21分野ごとに数日間の作業部会を開く。20日には、参加国の企業や非政府組織(NGO)など180団体以上が交渉官らに意見表明などをする「ステークホルダーミーティング(利害関係者の会議)」を開催する。
米国など先行参加国は年内妥結に向け、今回と9月の次回会合を経て、10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で大筋合意を目指す。
しかし、これまで約3年半の交渉で、議論が終わったのは「電気通信」など数分野にとどまり、輸出入にかかる関税の撤廃・削減など多くの分野で議論は難航、課題を残しているもようだ。このため5月にペルーで開かれた前回会合から、大筋合意の時期について、年末までの先送りを容認する声もあり、妥結時期が越年する可能性が出ている。
◆TPP交渉開始 日本も参加へ
7月15日 11時30分 NHKニュース
TPP=環太平洋パートナーシップ協定の18回目の交渉会合がマレーシアで始まり、参加国が年内の合意を目指すとするなか、日本は終盤の23日午後から初めて交渉に参加できる見通しで、みずからの主張を展開する高い交渉力が求められます。
TPPの18回目の交渉会合は、マレーシアのボルネオ島にあるリゾート地・コタキナバルで、アメリカやオーストラリア、それにシンガポールなど11か国の交渉官らが参加して、15日から今月25日までの日程で始まりました。交渉では、全体を話し合う首席交渉官会合に加えて「関税の撤廃」や「知的財産」など分野ごとの作業部会が開かれる予定で、日本はアメリカの国内手続きが終了する23日午後から初めて参加できる見通しです。
参加国の発表などによりますと、交渉は、前回までに「電気通信」など一部の分野の協議がおおむね終了し、食品の安全基準などを定める「衛生植物検疫」なども話し合いはすでに大幅に進展しているということです。
一方で、「関税の撤廃」や「知的財産」、それに「環境」といった分野は、各国の利害が対立し協議が難航しているということです。参加国は年内の合意を目指すとしており、今回の会合の終盤から初めて交渉に参加する日本は、みずからの主張を展開する高い交渉力が求められます。
マレーシアの交渉官の1人は「日本の参加によって建設的な協力関係が新たに築かれることを期待しています。日本の主張を聞くのを楽しみにしています」と話していました。
(転載終了)